糖尿病とは
血液中にはブドウ糖が含まれていますが、これは脳をはじめ全身の細胞のエネルギー源になります。ブドウ糖は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって細胞内に取り込まれて使われますが、インスリンが不足、または働きが低下すると細胞がブドウ糖をうまく取り込めなくなり、血糖値が高い状態が続く糖尿病を発症します。高血糖は血管に負担をかけて動脈硬化を進行させて心筋梗塞や脳卒中のリスクを上昇させます。また、毛細血管にも大きなダメージを蓄積させて、失明、足の壊疽や切断、透析が必要になる腎疾患など深刻な合併症を起こす可能性があります。また、全身のタンパク質を糖化させることで老化への関与が指摘されています。さらに、インスリンの効果が低下するタイプの糖尿病では過剰なインスリンが分泌される高インスリン血症を起こすことがあり、これが高血圧などの発症・進行に関わっているとされています。
糖尿病の有病者と予備群は合計約2,000万人になるとされています
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2016年度)では、糖尿病有病者と糖尿病予備群をそれぞれ約1,000万人と推計しています。適切な治療や対応が必要な方が約2,000万人もいるということです。ところが糖尿病でも4~5人に1人程度は治療を受けておらず、特に40代男性は半数に近い方が治療を受けていないとされています。
糖尿病の症状
初期には自覚症状に乏しく、進行すると喉がやたらと渇く、水を飲む量が増える、頻尿・夜間頻尿、疲れやすいなどの症状を起こします。また、かなり進行するとダイエットなどをしていないのに体重が減少しはじめることがあります。こうした症状が現れた場合はかなり深刻な状態になっていますので、一刻も早い治療が必要です。
糖尿病の検査と治療
健康診断などで糖尿病が疑われる場合には、受診してください、早期に治療を開始することで、ストレスの少ない食事制限や運動療法によって進行を抑制できます。糖尿病は正常な血糖値が続くようコントロールし続ける必要がある疾患ですから、無理のない内容で地道に食事療法や運動療法を続けていくことが重要です。
境界型糖尿病
将来、糖尿病になる可能性が高い状態ですが、すでに動脈硬化性疾患の発症リスクが上昇している状態です。特に、内臓脂肪型肥満や高血圧・脂質異常症を合併しているメタボリックシンドロームでは動脈硬化の進行が促進されてしまいます。境界型糖尿病の段階で適切な血糖コントロールを行うことで、リスクを下げましょう。こうした段階であれば楽な生活習慣の改善でも効果が見込めるため、健康診断の結果にご不安がある場合には、早めの受診をおすすめします。
血糖値の検査
血液を採取して血糖値を調べますが、血糖値は食事などに大きく左右されます。空腹時の血糖値が126mg/dL以上、または食後血糖値が140mg/dL以上で糖尿病が疑われ、再検査でも高い数値が出る、あるいは典型的な糖尿病の症状がある場合に糖尿病と診断されます。近い将来糖尿病を発症する可能性が高い境界型糖尿病や初期の糖尿病の診断には経口ブドウ糖負荷試験を行い、180mg/dL以上は糖尿病発症リスクが高いとされます。
糖尿病の診断や状態の変化は尿検査では判断できないため、必ず血液検査を定期的に受けるようにしてください。また、合併症による失明を避けるためにも、糖尿病と診断されたら定期的な眼科受診も必要です。
ヘモグロビンA1c(HbA1c)検査
血糖値は食事などの影響を受けて大きく変動しますが、。ヘモグロビンA1c(HbA1c)は検査前1~2ヶ月の平均的な血糖値を調べることができ、直前の食事などに影響を受けません。ヘモグロビンA1c(HbA1c)の数値は治療効果を調べるためにも行われます。
治療
1型糖尿病と2型糖尿病に大きく分けられ、生活習慣病による糖尿病は2型で糖尿病全体の大多数を占めています。
1型糖尿病
インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が壊れ、インスリンをほとんど分泌できない状態です。インスリンを注射で補う治療と、自己血糖測定を行います。即効型インスリンと持続型インスリンがあり、状態に合わせた組み合わせで適切な血糖値にコントロールします。
2型糖尿病
主に肥満や生活習慣によって発症します。インスリン分泌が不足する分泌不全、インスリンの効果が低下するインスリン抵抗性があります。食事療法と運動療法を基本に行い、それでは十分改善できない場合に薬物療法を併用します。
食事療法
肥満がある場合にはカロリー制限によってゆっくり減量します。必要な栄養素を十分にとることができるよう、栄養バランスも考慮します。3食を規則正しく食べて、間食や糖分のある飲物、飲酒はできるだけ控えてください。
運動療法
軽い有酸素運動を継続して行ってください、運動によって筋肉への血流量が増えると血中のブドウ糖が細胞に取り込まれやすくなるため、血糖値低下につながります。筋肉強化によって基礎代謝が上昇し、インスリンの働きの改善も期待できます。運動は続けないと効果がなくなってしまうため、最低でも週に3回以上、数日おきのペースで行ってください。適した運動内容や頻度は他の疾患の状態などによって変わりますし、過度な運動は逆効果になることもありますので、医師と相談してから行うようにしてください。
薬物療法
糖尿病の治療薬は作用や効力、服用のタイミングなどが異なるものが多数ありますので、状態やライフルタイルなども考慮した上で処方しています。ご希望がありましたら、なんでもお気軽にお伝えください。