肝臓内科

肝細胞がん

肝細胞がん肝臓がんには肝臓に原発する原発性肝がんと他の臓器の癌が肝臓に転移する転移性肝がんの2種類に分かれます。ここでは、原発性肝がん(肝細胞がん)についてのみ触れます。
肝細胞がんの約95%以上に慢性肝炎や肝硬変の合併を認め、95%以上で肝炎ウイルスの持続感染が見られます。原因ウイルスの内訳として、C型肝炎が約70%、B型肝炎が20%となっています。C型肝炎からの肝臓がんは60代にあり、B型肝炎からの発生は40-50代にあります。いずれも男性に多く見られます。

症状

肝硬変の症状(肝腫大・右季肋部痛など)がしばしばみられ、持続する発熱も稀ではありません。時には、腫瘍が腹腔内に破裂して、急激な腹水の増加と低血圧症状(ショック)を認めることもあります。

診断

肝機能検査以外に、腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-Ⅱ)が有用です。腹部超音波検査(エコー)も有用で1cm以上の腫瘍は見つけられるようになってきています。エコーで疑わしい病変があった場合には、CT検査やMRI検査が有用です。最終的には、肝臓の組織検査(肝生検)を行い、確定診断を行います。

治療

大きさや進展程度、肝臓の機能評価次第ですが、まずは外科的切除が行われます。ただし、3cm以下であれば、ラジオ波焼灼療法(RFA)が行われ、負担も少なくて済みます。切除が難しい場合は、経カテーテル肝動脈塞栓術(TACE)が行われますが、再発率がやや高く、根本的な治療になり得ないところがあります。
また上記の治療が難しい場合は、抗癌剤治療があります。近年、新薬が次々と発表されており、薬剤選択や副作用の面からも症例が豊富な総合病院の肝臓専門医に委ねるのがよいでしょう。
2020年夏には肝細胞がんに対する肝移植の適応もさらに広がり、症例数の増加が期待されています。

原発性硬化性胆管炎(PSC)

原発性硬化性胆管炎は胆管が炎症を起こし、狭窄を来たし、胆汁の流れが悪くなることで肝硬変、肝不全となる進行性の病気です。男性に多く、20代と60代にピークをもつのが特徴で、患者数は1200人ほどと推定されています。若い方では、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)、高齢者では膵炎の合併が多いです。膵炎の中には免疫が関与する自己免疫性膵炎に合併した胆管炎が含まれていることもあり、注意が必要です。

原因

胆管粘膜に対する免疫システムの破綻が胆管障害の原因と考えられていますが、詳しいことは分かっていません。

診断

病歴や血液検査やCT・MRI検査などから原発性硬化性胆管炎が疑わしい場合は、胆管内に造影剤を流す検査(ERCP)を行い、胆管造影所見をもって、診断ということになっています。肝臓の組織検査(肝生検)を行うこともあるようですが、この病気に特徴的な所見が得られる頻度は低く、ほとんど行われません。大腸の病気を合併していることが多いため、大腸カメラ検査は必須です。

治療

胆汁の流れを緩和するために、ウルソデオキシコール酸の内服を行います。これで肝機能の改善は期待できますが、予後の改善には繋がらないという報告もあります。ステロイドは基本的に効果は無く、推奨されていません。胆汁の流れを改善するために、胆管の狭い部分にチューブ型のステントを留置が有効なことがあります。肝不全に至った場合は、肝移植が唯一の治療法ですが、移植後の再発も高いと言われています。

予後

移植をしない場合、5年生存率が75%と言われており、できれば肝移植が望ましいです。また、胆管がんや炎症性腸疾患からの大腸がんのリスクも高く、長期的な経過観察が必要です。

原発性胆汁性胆管炎(PBC)

原発性胆汁性胆管炎は2016年までは原発性胆汁性肝硬変と呼ばれていた病気です。この病気が肝硬変の段階で見つかることが多いため、肝硬変という病名が付いていましたが、近年、多くの症例が肝硬変に進展する前に診断されるようになり、現行名に変更となりました。自己免疫システムの破綻で、肝臓内の胆管が障害されて、胆汁の流れが悪くなる、慢性・進行性の肝臓の病気です。自己免疫性肝炎と同様に中年女性に好発し、患者は5-6万人と推定され、稀な病気とは言えません。特効薬が無く、肝硬変から肝不全へ進行するような患者さんは、肝移植が唯一の治療法となります。

原因

抗ミトコンドリア抗体が高頻度で陽性になったり、自己免疫疾患の合併症が多いことから、自分自身の免疫が関与していると考えられますが、はっきりしたことは分かっていません。

診断

中年以降の女性で、肝機能や胆管の状態を示す項目(ALP、γ-GTP)が上昇していれば、本疾患を疑い、IgMと抗ミトコンドリア抗体を測定します。肝生検を行って、組織診断で確定診断となります。

治療

ウルソデオキシコール酸(ウルソ)やベザフィブラートが肝機能の改善には有効ですが、自己免疫性肝炎のように、ステロイドは効きません。痒みも伴うことが多いので、イオン交換樹脂製剤コレスチミドや抗ヒスタミン剤などの内服薬でコントロールをすることが多いです。

予後

本疾患の主な死因は、肝不全です。80%の症例は、肝機能異常のみで症状を伴わないことが多いです。病状が進行すると、皮膚の痒みや黄疸、食道・胃静脈瘤、腹水などの症状が出てきます。無症状のまま、長期経過する症例も多いですが、20%は症状が出て、そのうち、20%は肝不全で死亡すると言われています。黄疸が出れば、肝移植を検討しなければなりません。症状のある場合は、指定難病の公費助成が受けられます。

脂肪肝

脂肪肝肝臓には、余分な脂肪を中性脂肪やグリコーゲンとして蓄える働きがあります。しかし、蓄えられる脂肪が過剰になると、肝細胞に影響を及ぼすことがあります。肝細胞の30%以上に脂肪が蓄積した状態を「脂肪肝」と呼び、医療用語では「脂肪性肝障害」といいます。

脂肪肝というと、一般的には飲酒が原因のアルコール性脂肪肝を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、近年では飲酒歴がないにもかかわらず肝臓に脂肪が過剰に蓄積する「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」が増加しています。
※近年の研究により、NAFLD(非アルコール性脂肪肝)と診断された方の96~98%がMASLDと一致するとの報告があります。また2023年には欧米の学会や日本肝臓学会で、差別や偏見の観点などからNAFLDやNASH(非アルコール性脂肪性肝疾患)などの脂肪肝に関する名称・定義が変更になっているため、ここでは、NAFLDの一部内容をMASLDとして説明しております。

MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)とは

脂肪肝は従来、アルコール性脂肪肝(ALD)と非アルコール性脂肪肝(NAFLD:NAFL/NASH) に分類されていました。しかし、近年の研究により、脂肪肝が糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などの代謝異常と密接に関連していることが明らかになりました。そのため世界的な肝臓病学会では、肝臓の一連の変化の基準となる状態を脂肪性肝疾患(SLD)と定義し、アルコールの有無やウイルス性肝炎の病歴に関わらず、代謝異常が関与する脂肪肝を「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」として再定義をしました。

MASLDは、「Metabolic dysfunction Associated Steatotic Liver Disease」の頭文字を取った名称で、マッスルディーと呼ばれます。

MASLDの診断には、脂肪肝があることに加え、代謝異常(肥満、2型糖尿病、高血圧、内臓脂肪型肥満など)の合併があることが条件となります。一方で、大量飲酒によるアルコール性肝障害やウイルス性肝炎など、他の肝疾患が関与していないかを慎重に評価する必要があります。

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患炎(MASH)

脂肪の蓄積により肝細胞が損傷し、炎症や線維化が進行する状態です。MASHは放置すると肝硬変や肝がんへと進行するリスクが高まります。

症状

脂肪肝は、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。そのため、健康診断で指摘されて初めて気づくケースが多く見られます。しかし、症状がないことや肝炎ではないことから放置してしまう方も少なくありません。放置すると肝細胞が変化し、やがて肝硬変や肝がんに進行するリスクがあります。早期発見と適切な管理が、重篤な病態への進行を防ぐ鍵となります。

原因

肥満・高カロリー輸液・アルコールの飲み過ぎ・ステロイド・甲状腺ホルモンの異常・低栄養などが挙げられます。

診断

脂肪肝の診断には、血液検査と腹部エコー(超音波)検査などの画像検査を行います。必要に応じて、より詳しい評価のために肝生検(肝臓の組織を採取して調べる検査)を実施することもありますが、確定診断に必須ではありません。

MASLDは、脂肪肝があることに加え、肥満または2型糖尿病が合併している場合、または肥満ではなくても2種類以上の代謝異常(高血圧、脂質異常症など)がある場合に診断されます。

MASLDの診断規準

脂肪肝があることを前提に、追加で以下の条件①~③のいずれかが見られる場合、MASLDと診断することができます。

① 肥満状態 アジア人の場合BMIが23.0以上
② 2型糖尿病 糖尿病の診断基準に従う
③ 2種類以上の代謝異常
  • 腹囲がアジア人男性では90cm以上、女性で80cm以上
  • 血圧が130/85mmHg以上か高血圧の薬物治療中
  • 脂質異常症または脂質異常症の薬物治療中
  • 耐糖能異常(高血糖または高HbA1c)またはインスリン抵抗性高値など糖尿病予備軍

中高年の多くの方が、これらの条件に該当する可能性が高いです。これらの条件に合致する場合や、心当たりがある方は、お気軽に当院までご相談ください。

検査

血液検査

肝臓の状態を把握するために、AST、ALP、γ-GTPなどの肝酵素やアルブミンをはじめ、肝線維化の指標となる血小板数や肝線維化マーカーを確認します。さらに、血糖値、HbA1c、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロールなど、代謝機能に関連する項目もチェックします。

これらの数値を組み合わせ、FIB-4 indexやNAFLD fibrosis scoreなどのスコアリングシステムを用いることで、肝組織の線維化の進行度や肝硬変リスクを評価していきます。

腹部超音波検査(エコー)

腹部超音波検査は、お腹に医療用ジェルを塗り、プローブと呼ばれる超音波発受信器を当てるだけの、体に負担の少ない検査です。超音波の反射や吸収の特性を利用して、体内の臓器を画像化することができます。

肝臓の超音波検査では、脂肪肝の進行具合や肝線維化の程度、肝がんの有無などを詳しく確認できます。超音波検査は、妊婦さんの胎児診断にも使用されるほど安全性が高い検査の一つです。

エラストグラフィ検査

フィブロスキャンは、剪断波(せんだんは)と呼ばれる特殊な超音波を肝臓に当てることで、肝臓の硬さや脂肪の蓄積量を測定する検査です。肝細胞が繊維化すると肝臓が物理的に硬くなるため、肝硬変のリスクを評価する非侵襲的な検査として注目されています。従来の肝生検と異なり、体に針を刺すことなく測定できるのが特徴です。

フィブロスキャンは、トランジェントエラストグラフィ(瞬時的弾性波検査)とも呼ばれ、超音波エラストグラフィの一種です。当院では、最新の超音波検査を導入しており、SWE(Shear Wave Elastography:剪断波エラストグラフィ)による肝臓の硬さの評価や、ATI(超音波減衰法)による肝脂肪の定量測定が可能です。これにより、フィブロスキャン以上に詳細な肝臓の脂肪化や線維化の「見える化」が実現できます。
また、超音波を利用した検査のため、放射線被曝の心配がなく、MRIのような騒音もありません。完全に非侵襲で、繰り返し実施できるため、脂肪肝の進行状態のモニタリングや治療効果の評価に最適です。

治療

まずは食事や運動などの生活習慣を見直し、改善することが最も重要です。その上で、必要に応じて薬物療法を行い、病態の進行を防ぎます。
当院は、肝臓の専門医が在籍しており、患者さん一人ひとりの肝臓の状態を詳しく評価した上で、食事や運動療法の指導、適切な薬剤の選択などを丁寧に行っています。

生活習慣の改善

まずは体重を減らすことが重要です。適切な体重管理によって、肝組織の状態が大きく改善されることが確認されています。

MASLDと診断された場合、多くの方は糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を伴っているため、食事の見直しが欠かせません。栄養バランスを維持しながら適切なカロリー制限を行うことが大切です。また、有酸素運動を習慣化し、睡眠の質を向上させることで、体重の減少だけでなく、生活習慣病の改善も期待できます。

薬物療法

生活習慣の改善を続けても十分な効果が得られない場合や、診断時点で肝硬変へ進行するリスクが高いと判断される場合は、薬物療法を検討します。なお、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病の基礎疾患がある方は、それらの治療を適切に行うことで肝機能の改善が期待できます。

MASLDやMASHの治療としては、ビタミンE製剤の内服が有効であるとするデータがありますが、日本では保険適用外のため自由診療となります。また、アメリカではオベチコール酸の投与が有効であるという研究も報告されています。

新しい肝線維化マーカーELFスコアのご案内

肝線維化は、ウイルス性肝炎や、自己免疫性疾患、過度のアルコール摂取、脂肪性肝疾患などにより、肝臓が継続的に損傷を受けることで引き起こされます。進行すると肝硬変、肝不全、肝細胞がんなどのリスクが上昇します。

近年、飲酒がさほど多くなくても、脂肪肝の方が増えています。 脂肪肝は腹部超音波検査やCT検査などの画像診断や血液検査(GOT、GPT、γ―GTPなど)で判断していますが、慢性肝炎や肝硬変になりかけている(orなっていく)可能性がどのくらいあるのかというのがわかりにくい病気です。肝炎や肝硬変は、かなり進行してから症状が出始めることが多く、肝臓が硬くなり始めていることを早めに察知することが重要です。肝臓の硬さ(線維化)の評価は、血液中のヒアルロン酸、IV型コラーゲン、IV型コラーゲン7S、III型プロコラーゲンN末端ペプチド(P-III-P)、M2BPGiがあります。
いずれも外来で簡便に実施ができる検査です。また採血のみなので繰り返しの実施が可能で、病状の経過観察などにも使用できます。
さらに近年ではFibroscanやエラストグラフィーなどの画像によっても肝線維化を評価できるようになりましたが、肥満になると測定できないといった弱点がありますし、クリニックレベルで行うことが難しい検査です。

ヒアルロン酸

ヒアルロン酸は、高分子多糖体(ゼラチン状物質)で、線維芽細胞で合成され、肝臓で分解されます。

  • 細胞間の潤滑・接着の役割を果たしており、生体内では、関節液、眼球硝子体、臍帯に多く存在しています。
  • 肝疾患、特に肝硬変では、肝臓の線維化に伴い、線維芽細胞によって合成が亢進され、肝機能低下によって分解されにくくなり、血中のヒアルロン酸が上昇します。

III型プロコラーゲンN末端ペプチド(P-III-P)

III型プロコラーゲンN末端ペプチド(P-III-P)は、体内の結合組織に広く存在するコラーゲンが作られる際に、同時に作られる物質で、肝線維化の程度を示すマーカーとして使用されます。
コラーゲンの生成が強くなるような状態で、数値が上がります。肝疾患以外では免疫疾患や腎臓の病気などで上がることがあります。

M2BPGi

血液中のヒアルロン酸、IV型コラーゲン、P-III-Pの量は肝臓だけでなく、他の身体の要素からも影響を受ける可能性があるため、精度に一部限界があります。
M2BPGi(Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体)は肝線維化の進行に伴う蛋白の変化を調べるもので、肝線維化の高い精度で評価することが可能です。これまでの血液検査と異なり、M2BPGiは肝臓に特異的な変化を評価することができるため、その評価精度は非常に高いとされています。
また線維化の進行だけでなく、将来の肝細胞癌の発生も予測することができると報告されています。

表. 肝線維化マーカー

  検査名 カットオフ値   肝疾患以外で高値となる
病態・疾患
健常者 慢性肝炎 肝硬変
M2BPGi(COI) (-)1.00未満 (1+)1.00~2.99 (2+)3.00以上
ヒアルロン酸(ng/mL) 50以下 130以上 食事・運動、加齢、関節リウマチ、強皮症
IV型コラーゲン(ng/mL)   150以下 糖尿病、糖尿病性腎症、腎不全、甲状腺機能亢進症、間質性肺炎等
P-III-P(U/mL)   0.3~0.8 自己免疫性疾患、肺線維症、慢性膵炎、糸状体腎炎、腎不全等

【参考】
・肝胆膵 70巻増刊号、2015
・久野 敦;医学のあゆみ、249(8)、2014

EFLスコア

最近開発された、ELFスコアはヒアルロン酸、プロコラーゲンⅢアミノ末端ペプチド(P-Ⅲ-P)、マトリクスメタロプロテアーゼ1(TIMP-1)の3つの線維化ダイレクトマーカーを測定して、算出する非侵襲的血液検査です。ELFスコアは、慢性肝疾患患者における肝硬変への進行や肝関連イベントのリスクが高い患者を特定するための予後予測マーカーとして使用することができます。

こんな方におすすめです

  • 脂肪肝と言われたことがある
  • お酒をそんなに飲んでいない(or飲まない)のに肝機能の数値に異常が出続けている
  • 糖尿病治療中の方
  • 肥満の方
  • アルコール性肝障害 (ALD)、原発性硬化性胆管炎 (PSC)、B型肝炎 (HBV)、C型肝炎(HCV)で治療中の方など

保険診療で出来ます。
ご興味のある方は担当医までお知らせください。

自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎は、免疫制御システムが異常を来し、自分の肝臓細胞を傷害することで引き起こされる肝機能障害で、特に中年女性に多く発症します。患者数は2万人とも推定されています。適切な治療を行わないと、慢性肝炎から肝硬変に進行しますが、ステロイドが奏功し、病状の進行を抑えることが可能です。

原因

自己免疫の関与が考えられていますが、その機序は明らかではありません。特定の遺伝子異常がありますが、検査は保険適応外です。

症状

症状はないことが多く、健診で肝機能異常を指摘され、偶然見つかることが多い病気です。

診断

肝機能異常、IgGや自己抗体が高値で、ステロイドが著効すれば、確定診断です。必要に応じて肝生検を行う場合があります。

治療

ステロイドが著効するため、第一選択薬です。ステロイドは十分量から開始し、肝機能の改善後に漸減します。軽症例ではウルソデオキシコール酸も有効です。ステロイドが奏功しない、再燃する場合は、免疫抑制剤を使用することもあります。

医療費補助制度

2015年より条件付きですが医療費助成の対象疾患に含まれましたので、条件を満たせば公費助成が受けられます。

慢性B型肝炎について

B型肝炎は、B型肝炎ウイルスに感染することで肝臓が炎症を起こす病気です。感染した時期や健康状態によって、一時的な感染で終わるか、感染が生涯続く「キャリア」になるかに分かれます。日本のB型慢性肝炎の方の多くは、免疫が未熟な新生児期~幼少期(2-3歳くらいまで)に感染し、約9割の方が自身の免疫力で症状が出ないキャリアの状態になっており、主に母子感染が原因です。日本の大多数を占めるタイプBとCは成人期に感染しても慢性化せずに自然にウイルスが排除され治ります。しかし、欧米型のタイプAが性的接触で感染し、慢性化(キャリア化)する例が年々増加中です。キャリアになれば、高い確率で肝臓がんに至ります。
日本において、キャリアの方は110~140万人いるとされていますが、その半数の方が自分自身がB型肝炎ウイルスに感染したことを知らないと推計されています。血液検査で、B型肝炎ウイルスの感染歴、活動性があるか、増殖する力がどの程度かなどを評価することができます。もし、ウイルスが肝臓の中にいる状態であれば、肝硬変や肝臓がんになるのを防ぐためにも、治療をする必要があります。残念ながらウイルスを完全に排除する薬は今のところ開発されていないので、長期間治療を続ける必要があります。しかし、薬でウイルスを減らすことはできます。

診断

B型慢性肝炎を疑えば、HBs抗原を測定します。S抗原が陽性ならば、B型肝炎ウイルスに感染していると考えます。当院ではさらに病状を把握するために、一般肝機能検査・肝がんマーカーとともに、e抗原や抗体、DNA量などを測定し、腹部超音波検査を行い、肝臓の状態を把握します。

B型慢性肝炎の自然経過

肝機能(特にALT(GTP))の上昇が続く場合は、予後が悪いため、積極的に抗ウイルス両方を導入する必要があります。また、e抗原が陰性のキャリアの方も、DNA量が高く、ALT(GTP)値が異常であれば、治療開始の適応です。ウイルスを完全に除去することは非常に難しいですが、微量以下に保つことができれば、発がんリスクも下げられます。

B型慢性肝炎の治療方針

抗ウイルス治療の目的は、慢性肝炎の方の生命予後と生活の質(QOL)を改善することです。放置すれば、高い確率で肝硬変、肝がん、肝不全となっていきます。抗ウイルス治療として、ペグインターフェロン治療や核酸アナログ治療を行います。ガイドラインでは、初回治療の慢性肝炎症例に対して、原則としてインターフェロン単独治療を推奨しています。特に若い方や妊娠希望がある方は、核酸アナログ製剤長期投与を回避したいところですので、インターフェロン治療が優先されます。インターフェロンが効かない方や肝硬変に至っている方は、核酸アナログ製剤を投与します。薬の種類も多く、その選択や副作用・継続・中止のタイミングなどの問題もありますので、こちらの治療が必要な方は、連携する医療機関へご紹介させていただきます。

医療費助成制度

国と自治体から医療費の助成が受けられます。 申請書はお近くの保健所に提出して下さい。

B型肝炎ワクチン定期接種

1986年以降、母子感染防止事業が奏功し、新規のB型肝炎母子感染は激減しています。その代わり、B型肝炎ウイルスに感染しているお子さんからお子さんへの感染が多くなっており、2016年10月から、生まれた全ての赤ちゃんを対象として、ワクチン接種が開始されました。2016年4月以降に出生した赤ちゃんを対象に生後2,3,7-8ヶ月の計3回、1回0.25mlの皮下注射を1歳までに受ければ、費用は公費で負担されます。

慢性C型肝炎

C型肝炎はC型肝炎ウイルス感染者の血液を介して感染します。感染すると、70%の方が持続感染状態(キャリア)となります。キャリアの方のうち10-20%で、20-30年の経過で肝硬変となります。肝硬変からの発がん率は年間約8%です。男性、高齢、飲酒、ALT(GPT)異常値、糖尿病、肥満などがリスクとしてあげられています。
2011年時点ですが、日本において、C型肝炎ウイルス感染者は98~158万人と推定されています。そのうち約30万の方が、自分自身が感染していることを知らないとされ、20~80万の方が、感染したことを知っているが受診していない、もしくは通院をやめてしまっているとされています。精密検査をしたけれど、通院していない理由は、「症状がない」「医師に通院は必要ないと言われた」「経過観察で大丈夫と言われた」「検査や治療費がかかる」などが上位に挙げられています。症状がないために、放置すると、確実に肝臓の状態は悪化します。それに伴い、肝臓がんの発症率も高まりますので、症状がなくても早期からの治療が必須です。

診断と評価

診断はC型肝炎ウイルスの抗体を調べます。陽性だとしても、現在感染中かどうかは分かりませんので、ウイルス量を調べます。慢性肝炎の状態では症状が出ることは少なく、またALT(GPT)値が正常でも、キャリアの方の70%は肝臓の線維化が進んでいることが分かっているので、治療開始することをお勧めします。C型肝炎になることで、癌以外にも、腎臓病・糖尿病・心不全など様々な病気を引き起こすリスクがあります。

治療

治療ガイドラインに沿って行われます。対象は状態の良い肝硬変の方までが対象となります。ウイルス型を問わず、初回治療・再治療ともにインターフェロンを用いない薬剤の組み合わせで行われます。多くの薬剤があり、以前ウイルスの排除がうまくいかなかった方でもほぼ完治が見込めるまでになりましたが、副作用・効果も様々で、難易度が高い総合的な判断を要しますので、連携する医療機関へご紹介させていただきます。

抗ウイルス治療の適応がなかった、治療を行っても、ウイルスを排除できなかった方
などは、肝炎を沈静化し、肝硬変や肝臓がんへの進展を遅らせる意味で、肝保護療法を行います。使用される薬剤は、ウルソデオキシコール酸、グリチルリチン製剤(いわゆる強ミノ注射)、小柴胡湯という漢方薬があります。これらに加えて、2006年より瀉血療法が保険適応になっています。この治療は、肝臓に蓄積する鉄分が発がんと関連していることから、フェリチン値<10ng/mlもしくはヘモグロビン値<11g/dLに設定して、外来で2-4週ごとに一回200-400mlの血を抜きます。6-8回程度で目標に達することが多いです。その後は数ヶ月に一回治療を行い、目標値を維持していきます。

医療費助成制度

国と自治体から医療費の助成が受けられます。 申請書はお近くの保健所に提出して下さい。

肝硬変

肝硬変は肝臓が高度の線維化を来たし、見た目には結節を形成した病態です。原因の内訳としては、約50%がC型肝炎、約20%がB型肝炎、約10%ずつがアルコール性肝炎とB・C以外のウイルス性肝炎が占めています。

症状

肝硬変は長期の経過を経て形成された状態なので、突然発症するわけではありません。長期間は無症状で経過した後に、限界を超えると症状が出てきます。自覚症状としては、全身のだるさ・食欲低下・気持ち悪い・腹痛などが多いです。その他、肝臓が腫れるたり、腹水で上の方のお腹が張ったように感じたり、身体がむくんできます。進行具合では黄疸も出てくるでしょうし、胸や肩にクモ状の細い血管が見られたり、手のひらが赤くなったりすることは有名です。男性では乳房が女性のように発達することもあります。胃カメラをすると、食道や胃の静脈が隆起する静脈瘤が見られます。放置すれば、突然破裂し、大量吐血・下血することがありますので、定期的な観察は必要です。

診断

血液検査ではAST(GOT)やALT(GPT)、ビリルビンなどが上昇し、コレステロールやアルブミン・血小板などが低下します。肝臓の線維化の程度をみるには、血小板値が参考になりますし、Ⅳ型コラーゲンやヒアルロン酸を測定することで分かります。腹部超音波検査やCT検査では、肝臓が小さくなり、表面の凹凸が目立ってきます。場合によっては腹水が見られることもあります。

治療

アルコールが原因であれば、まずは禁酒です。腹水に対しては食塩制限と利尿薬を使用します。B型肝炎やC型肝炎が原因であれば、抗ウイルス薬の投与を行います。

予後

5年生存率は50%を超えるまでになっていますが、薬物コントロールや食事・アルコール制限ができないと、進行し、取り返しの付かない状況になってしまうことがあります。現在の肝硬変の最大の死因は、肝細胞がんですので、定期的な検査が必要です。

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